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奥秩父主脈縦走 with ORCUS24 ~準備編~
2020.11.09

奥秩父主脈縦走 with ORCUS24 ~準備編~

スピードクライミングやアタック用にフォーカスされたこのザックは、そのシンプルさと軽量性、それでいて質実剛健な造りに目を見張るものがある。
今回、その「シンプル」と「軽量性」に着目。盛夏も少し落ち着いた頃に、その可能性を確かめるべくちょっとULな山行に繰り出してきたので、その軌跡を記そうと思う。
 

 

準備編

今回計画した行程は以下の通り。
 
■コース全容(奥秩父主脈)
瑞牆山ー金峰山ー甲武信ヶ岳ー雁坂峠ー将監峠ー雲取山
 
■行程内訳(2泊3日)
初日:
瑞牆山荘⇒瑞牆山⇒八丁平⇒金峰山⇒大弛小屋(幕営泊)
2日目:
大弛小屋⇒国師ヶ岳⇒甲武信ヶ岳⇒雁坂峠⇒笠取小屋(幕営泊)
3日目:
笠取小屋⇒笠取山⇒将監峠⇒飛竜権現⇒雲取山(ゴール)⇒鴨沢へ下山
 
通常3泊か4泊程度で計画するコースを、最小限の荷物と重量で軽快に歩けると踏み、少し切り詰めた日程で計画した。まだ日も長い時期で、一日の行動時間も長くとれるのも大きかった。因みに私は特に健脚でもなく、平均的な速度で歩く登山者と認識している。
勿論、走ったりすればこの行程も無理なくこなせ、場合によってはもっと縮める事も出来るだろう。ただ今回はあくまで「歩く」で、ストイックになり過ぎず、景色も楽しみながらと思い、この行程とした。
 
平均的な登山者である私が、1日での歩く距離を稼ぐには、やはり荷物の軽量化は必須で、この軽量化というのも長く歩くための「手段」の一つとして捉えている。以下に軽量化のポイントを纏めてみた。
 
 

■食料

もっとも軽量化への近道にして奥が深い分野である。単純に簡素でカロリーや栄養効率の良いものを選べばかなり軽くは出来る。しかし、人それぞれ代謝も違えば、食に対する好みも違う訳で、やはり色々試して自分を知り、自分に合う「食」を追求していく必要がある。とりわけ「味」は大切で、軽量で効率の良い食料でも美味しくなく喉を通らない、なんて事もある。歩く距離が長ければ上手く食を取る事は非常に重要になる。
また、山小屋の食事を利用するのも一つの手だ。重量を削減でき、且つ美味しい食事がいただける。その際は必ずその山行時に山小屋はやっているか?食事も提供しているか?のチェックは忘れずに。
個人的に平常時でも指標としているのは、「1日朝昼晩の3食の総計を1㎏以下」。軽さを出したい場合は嗜好食等も抑え「800g以下」を基準としている。
因みに今回は2泊3日分で「1730g」概ね基準はクリアできた。(最終日の昼は少な目、晩は無し)
 
 
■道具
良く言われているのは「バックパック」「寝具」「テント」この3種が軽量化した際の数値的恩恵が大きいという事。今回の装備を例に出すと顕著だ。
 
【バックパック】
・フレーム入り45Lバックパック=約1500g
・ME ORCUS 24=490g
☆-1010g
 
【寝具】(シュラフ・マット)
・ダウン量250gシュラフ=約700g + フルサイズクローズドセルマット=約400g 計:約1100g
・ME Helium Quilt=510g + 最小限クローズドセルマット=110g 計:620g
☆-480g(更にHelium Quiltはサッと羽織れるので防寒着も最小限のもので削減可能)
 
【テント】
・スタンダード2ウォールテント=約1500g
・軽量タープ+最小シート=450g
☆-1050g
 
上記の通り、これだけで約2500gの軽量化が図れる。当然不自由な部分が出てくる場合もあるが、そこは経験値でカバーしたい所。(多少のやせ我慢も経験値の一つ?かな…)
 
因みに今回の主役「ORCUS 24」は状況に応じてパーツを抜き差しし、更なる軽量化を実現出来る。
今回は以下パーツを削った。
 
・トップロープストラップ(13g)
 ※特にロープ等を挟まないため。代わりに底部にマット挟むコード追加(7g)
 
 
・サイドテープバックル(18g)
 ※開口部のロールトップ式で必要十分なため
 
 
・ヒップベルト(28g)
 ※今回の重量と状況では不要なため。
 
 
この必要なパーツだけ残しシンプルに仕上げられる仕様は非常に良い点だ。
私は余りヒップベルト(ウェストハーネス)を締めるのが好きではないので、30L前後のザックには基本つけない事が多い。(外せる場合は外す)
勿論、横揺れ防止や、腰荷重、ザックをより身体に寄せるという意味では大きな役割を果たすヒップベルトだが、そもそもORCUSの場合はザック自体の重心を上に持ってくる事でバランスを取るタイプなので腰荷重はほぼできない。ではヒップベルト無しで、横揺れ防止やより身体に寄せたい時、、そんな時のちょっとしたTIPSを紹介しよう。
 
 
 
・今回削減した「サイドテープ」のバックル(6g)を、ショルダーストラップのテープ末端に取り付ける。
※ヒップベルトはテープ幅が気持ち広いのでここのバックルでは適合しない。
 
 
 
・背負いショルダーテープをザックが上部に来るようギリギリまで引き絞る
 
 
 
・取り付けた末端バックルを前で留める
 
 
 
・そのバックルのテープを引き絞れば
 
 
 
 
☆完成
 
ハイウェストではあるが、この様に疑似的なヒップベルトを形成する事が出来る。(スターナムストラップが上下2つになったイメージが近い)
これが意外とザック下部を寄せてくれ、横揺れ防止にも一役買ってくれる。且つしっかりベルト分の重量削減とシンプルさを実現できるので、おすすめのTIPSだ。
 
少々脱線してしまったが、最終OCRUS24に詰め込んだ重量と荷姿は以下の通り。
 
☆ベースウェイト:3236g
☆パックウェイト:6520g(水1.5L込み)

総重量7㎏以下ならばかなり軽快に歩けるはず。

 

 

ウェアリング編

次いで、各行動時のウェアリングを、所見も兼ねてご紹介しよう。
 
■通常時(基本)
・Frontier Cap – 色:Tasman Blue
 ソフトシェルワークキャップ。おでこ周り裏に汗受けメッシュが付いており快適。
・Redline LS Tee – 色:Paprika
 テンセル入りでサラっとした着心地に、抗菌加工あり。3日間汗だくでも嫌なニオイ無し!
・Dihedral Pant – 色:Blue Nights
 薄手ソフトシェル生地に綺麗なストレートシルエット。見た目シンプルだが随所に拘りを感じる逸 品。
・おまけ – 手拭い
 基本はポケットや首にぶら下げ、陽ざしが気になる時はキャップに挟んで陽ざし除けに。
☆ポイント
帽子はシルエットも好みで、汗受けメッシュもかなり良好だ。
暑さは落ち着いた時期とは言え、行動時の気温は15~26℃。日中汗はかき続けたが、思いのほかベースTは臭わなかった。ポリジン抗菌も効いているが、テンセル自体も抗菌に一役買っている印象。肌触りが良いので、汗で保水飽和しても嫌悪感は少なかった。
パンツもこれまた好みのシルエットで、気取らず履きやすく適度なゆとりもある。生地厚が絶妙で、盛夏から秋口にかけて快適に着用できる。膝が立体裁断だったり、バックポケットの左右サイズ違い、裾にドローコード仕込まれていたり、見た目以上に機能満載で使いやすい。基本は裾ロールアップして絞っていた。
 
 
■雨天時(気温低下時)
・Skardu Jacket – 色:Acid
 アクティブフィットによるライトウェイトなシェルジャケット。2.5レイヤーが好き!
・Zeno Pant – 色:Black
 大きく開くサイドジップがありながら軽量に仕上がっている防水パンツ。2.5レイヤーが好き!
☆ポイント
幸い期間行動中、雨には降られなかったが、降られた際を想定した最小限の雨具防寒装備。
ジャケットは大きなポケットを配しながらも意外に軽量に仕上がっている。生地厚とのバランスもとても良く、保険で持ち歩くのも苦ではない。
同じく大きなジップがありながらも軽量な防水パンツ。ミソは止水ファスナーを使わず裏フラップを設けカバーしている点。それにより開け閉めもスムーズで張りも少なくしなやか。ジップを大きく開けば脱ぎ着も楽で、ダブルスライダーで暑けれ裾閉じた状態で換気も出来る優れもの。
おまけのグローブは関連弊社の製品。雨具防寒グローブとしては最軽量の26g!末端は冷えやすいので雨天寒気を想定し、この手のグローブは必ず常備したい。
総じて私は保水せず乾きの早い2.5レイヤーが好きだ。基本下に何かしら着ているのでそれが3層目になってくれる。その分薄い生地が多いので、強度と防寒性は3レイヤー系には劣る。
 
 
■幕営時(防寒時)
・Groundup Headband – 色:Cosmos
 男性にも使ってもらいたいヘッドバンド。LS Tと同じテンセル素材で頭周りをカバー。
・Trembler Jacket – 色:Majolica Blue(W’s展開色)
 行動中の防寒着としても活用できる薄手ミッドレイヤー。意外に軽量に仕上がっている。
 シュラフの位置づけだが、フルオープン出来るので寒ければマントのように着られる。
☆ポイント
ヘッドバンドはニット帽だとちょっと…な時期に最適で、薄手だがそっと温かみを添えてくれる。
キルトがあるので軽量コンパクトなミッドレイヤー系ジャケットをチョイス。前面に通気防風シェルを配し、それ以外は裏地グリッドライナーの薄手フリースで抜け良くオーバーヒートしづらい。行動中も着れるし、意外に軽量でコンパクトにまとまるのが良い。
キルトは自由度が高いので、着てみたり、就寝時はフワっと掛布団式や閉じてシュラフ型にしたりと状況に合わせて使える便利な奴。
 
 
さて、色々と御託を並べ終えた所で、今回はここまで。
いよいよ次回「山行編」へ。